Z33 フェアレディZ Roadster 試乗記
(2003年10月20日記)

2003年10月、発売されたばかりのZ33ロードスターに試乗することができましたのでレポートさせていただきます。
■ロードスターを語る前に、まずクーペモデルの登場から触れてみたいと思います。Z33(新型)フェアレディZは、フェアレディとしてはSP&SR、S30、S130、Z31、Z32に続く6代目、Zの付くモデルとしては5代目となります。2000年8月のZ32生産終了後、事実上日産の看板からフェアレディZの文字が消え去りましたが、1999年10月18日に日産が発表していた「日産リバイバルプラン」のなかに、具体的な商品計画として「Z」の名前が挙がっていました。そして2002年7月30日、Z32型生産終了から2年の時を経て、Z33型(新型)フェアレディZは日米同時発表&発売されました。新しくなったZ33型フェアレディZは、スタイルや性能などそれまでのフェアレディZとは一線を引いたものといえます。Z32型が1989年(平成元年)に発売されていますから、有に13年目のモデルチェンジとなり1回分モデルチェンジを飛び越えたような進化があって当然で、そのため大きな変化を感じるのでしょう。逆に言えば、そのギャップをクリアしつつフェアレディZの持つ伝統を壊さない様に新しい「Z」を創り上げる。開発の方々は非常に苦労した部分ではないかと思います。事実、Z32型にあったワイド&ローのイメージは新しいZ33型では感じられませんし、最近の日産車のみならず安全適合ボディーのためか、かなり腰高に仕上がっています。しかし、外観のデザインは、日産の考えるその時代の「Z」を表現し変化し続け、それは今も昔も変わっていませんし、実際にドライバーズシートに座り、視線を前方に向けた瞬間、「これはZだ!」と納得できます。そして心の底からワクワクするような感情が込み上げてきます。正直、私自身もビックリしたのと同時にとても嬉しい瞬間でした。昔からZを乗り継いでいるオーナーほどこの感覚は強いのではないでしょうか。それ以来、「とにかく一度運転してみて!」と勧めています。
■クーペモデルの発売から約1年後の10月1日、万を期してロードスターが発売されました。そもそもオープンカーは、他の車には無い、オープンカーのみでしか味わえないその開放的なスタイルのため、それにかわる多くの犠牲をはらっていることを理解する必要があります。それは、クルマに当然のごとく求められている、居住性、静粛性、そしてクルマの基本性能である剛性、視認性などの根本的なもので、今回試乗したZ33型フェアレディZロードスターも例外でないでしょう。ただ、現在ではオープンモデルのクルマも、各社から多くラインナップされるようになり、その現状の中で新たに世に送り出すオープンカーとして決して他のものに引けを取らない商品開発が求められることは言うまでもありませんし、当然それらの事は加味されたニューモデルであると考えられます。

■ここで気になる事がありました。オープンモデルのクルマにはコンバーチブル、カブリオレ、ロードスター、スパイダーなど様々な呼び方があります。そして先代のZ32型オープンモデルはコンバーチブルだったにも関わらず、新型のZ33型はなぜロードスターと言うネーミングなのでしょう。先日機会があり新型Zの開発者の方々にお会いする機会がありましたので少し伺ってみました。

お話を伺ったのは、日産自動車(株)商品企画室チーフプロダクトスペシャリストの湯川伸次郎様で、まさにZ33型フェアレディZの生みの親です。湯川様はロードスターのネーミングについて、そもそもロードスターとは2シーターのオープンスポーツを指すのですが、フェアレディZロードスターはただ単にそれだけではなく、雨と雪の日以外は屋根を開けて「オープンエアを楽しむスポーツカー」で、「屋根を開けたときに一番かっこいいクルマ」であることを創造しロードスターとしたそうです。そのため幌を開けた状態では幌を全て収納し、デザインを重視していますし、空力を考え多少の雨ならオープンのまま走った方が良いように設計されているそうです。私が試乗した最初の日が大雨で、1枚ものの幌では雨音が非常に大きく、気になったことを伝えると、ロードスターはオープンが基本で、雨が防げる最低限のものがあれば良いし、ハードトップなどという貧乏くさいものは必要ない!そこまで割り切って開発しているということでした。クーペモデルでは2シーターのみと割り切った商品ラインナップ。ロードスターでも屋根など必要ないと言わんばかりの割り切り。ターゲットを絞り込んだ商品開発に、ここ最近の日産にはある意味パワーを感じます。

■今回試乗した初日が大雨だったため、屋根が開くクルマに乗りながら開けれないという状況はとてもフラストレーションの溜まるものでした。体にも精神的にも、かなり悪いです!そして先ほども触れましたが、Z32コンバーチブルの幌は2重構造になっているのに対し、Z33ロードスターでは1枚の幌のみとなりました。この事により雨音の大きさが気になり、大降りになると隣の人との会話も不自由なくらいのものでした。幌を閉めた状態で約1日走っていてうすうす気付いていたのですが、このZ33ロードスターの剛性はかなり高いもののようです。まず幌を閉めた状態でクルマを走らせると、一般的なオープンカーは開閉部分やゴムのパッキン部分からキュッキュッと擦れる様な音がするものですが、このZ33ロードスターにはありませんでした。まぁ新車だから音がしないのだろうと気にしていませんでしたが、屋根を開け走り込むほどにこのクルマの剛性の高さを実感することが出来ます。これは、Z33を開発する早い時期からロードスターの商品ラインナップが盛り込まれていたためでしょう。

日産自動車(株)第一車両開発本部兼第一車両計画部の永井様は、昔のように完成されたクルマの屋根を切って創ったようなオープンカーでは、今の時代の他のオープンカーと肩を並べることは不可能で、クルマ作りの最初の段階から企画する必要があると話して頂きました。また、オープンモデルはとかく風の巻き込みのみが問われますが、Z33ロードスターでは風を感じるためにどのように風が流れ込むか、どのくらい風を遮り逆に入れるか、という風のコントロールを考えたと言うことでした。湯川様の言うオープンエアを楽しむ演出に無くてはならないものが適度に流れ込む風だったんですね。そして永井様も、屋根を開けたときは1番だぞ!を目指したそうです。

■試乗2日目には雨も上がり、早朝の伊勢湾岸道路を往復してみましたが、オープンの開放感に3.5リッターのパワーは十分で、より一層の爽快感がありました。そして後方から聞こえる排気音も相まって、まさに五感をくすぐる作りになっていると思います。どうしても前モデルであるZ32コンバーチブルと比較してしまうのですが、Z32では同じラインナップにツインターボモデルがあったにも関わらずコンバーチブルにはチョイスされませんでした。しかしこのZ33の場合、クーペモデルと全く同じパワーユニットが搭載されています。これはどういう事かというと、NISMOなどから発売されるパーツの殆どがロードスターに利用できるということです。Z32のNAに乗っていた方ならご存じと思いますが、Z32型ではツインターボモデルのアフターパーツが多かったのに対し、NAモデルのパーツは非常に少なかったことを考えると納得して頂けると思います。オープンカーの場合、音で注意しなければいけない点が一つあります。それはタイヤです。純正では音まで考えられてチョイスされていますので気が付きにくいのですが、何気なく違うタイヤに交換すると悲劇が待っています。もしタイヤ交換することになった場合、とにかく静かなタイヤを選ぶことをお勧めします。何を隠そう、オープンカーで一番音が気になるのが走行時のタイヤの音なんです。
■日産の割り切ったクルマ創りはイメージだけでない事はわかりますので、この価格でこのクルマ、お買い得かも。そしてオープンカーは屋根の開く車ではなく、屋根の無い車と認識しておいた方が正しいようですね。仮の姿で雨風を防ぐ装置(幌)が付いていると。であれば日本の気象条件にオープンカーは合わないのでは?という意見もあるでしょうが、オープンの開放感、爽快感はオープンカーでしか味わうことが出来ない特別なクルマなのです。いちいち神経質になっていてはダメ!ってこと。また雑誌などでは有名なモータージャーナリストが、VQ3.5は回らないとか、ふけが悪い、重いとか指摘されムチャクチャ遅いクルマのように錯覚してしまいがちです。確かに車体を手で持ち上げようとすると重いですし、電子制御されている今のエンジンの中には燃費なども考慮してマイルドに仕上げているものもあります。しかしこのZ33に関して言うならば、ハッキリ言って恐ろしく軽快に走ります。クルマの重量など全く気になりません。ロードスターもクーペモデル同様、「とにかく一度運転してみて!」と勧めたくなる一台です。

Z33 フェアレディZ Roadster 試乗記