Y50 フーガ試乗記
(2004年11月25日記)

セドリック、グロリアの後継車として登場したフーガ。名前まで新しいものになりました。親しまれてきたセドリック、グロリアの名称を変えてまで登場させたこのフーガに、日産はセダンに新たなイメージを吹き込みたかったようです。フーガにはスポーツ志向のGTと、ラグジュアリー志向のXVが存在し、とりわけブルーバードから派生したセドリックがXV、スカイラインから派生したグロリアがGTといった所でしょうか。とは言っても、もう30年前には兄弟車として存在していた両車ですので今更拘る必要はないのでしょうし、フーガのGTとXVにおいて基本的な走りは両車とも共通であるとのことです。

■セドリック、グロリアからフーガへ
セドリック、グロリアの名前を廃止し、フーガという新たな名前にしたことには賛否あるようですが、フーガのターゲットとする年齢層は40代位からでしょうか、そうした場合この名称変更には大きな意味を感じます。40代前後の人たちは、小さい頃からセドリック、グロリアという名前を聞き慣れ、しかも高級セダンであることから年齢層の高いクルマという認識があります。もちろん個人差はありますが、スポーツには無縁のクルマ・・・が大方のイメージだと思います。私もそうですが、自分にはもう少し先のクルマかな?と考えるでしょう。もちろんフーガを購入する人が全て新規ユーザーではないのですが、セドリック、グロリアユーザーも心機一転、全てが新しくなった新型車として、この新しい名前「フーガ」に興味を持たれる事と思います。フーガの名前の由来は、音楽の種類「フーガ」(イタリア語でFuga)で、複数の旋律を積み重ねた楽曲構成が、「優美さ」と「ダイナミックさ」が調和したこの車にふさわしいという発想からネーミングされたそうですが、日本語辞書で「ふうが」を検索すると、【風雅】上品で優美な趣や味わいのあること。俗でなくみやびていること。また、そのさま。と、日本語での意味合いも狙っているようです。
■世界ブランドのエクステリアデザイン
スポーツ志向になったと言っても、高級車は高級車!スポーティーなディテールを取り入れながらも、シンプルでドッシリとしたエクステリアが印象的です。また一見して日産車と認識できるエクステリアデザインは、今の日産のブランディングに欠かせないものとなっていますが、このフーガにおいても見事に生かされています。シーマからスカイラインセダン、ティアナに至るルーフデザインの統一感やフロントグリルのデザインなどはその流れと言って良いでしょう。テールランプがスカイラインに似ているという声をよく聞きますが、GTの丸テールランプは確かにスカイラインに似ています。国内で比べるとスカイラインのテールに偏って見えるのですが、北米でブランド展開しているインフィニティのラインナップの中に置いてみると、なんと一連の流れであることが理解できるのです。北米インフィニティのウェブサイトなどで確認することができますが、Q45(シーマ)→「フーガVX」→「フーガGT」→G35 SEDAN(スカイラインセダン)→G35 COUPE(スカイラインクーペ)の流れで少しずつ変化していることがわかります。インフィニティブランドにおいてフーガはまだラインナップされていませんが、既にM CONCEPTとしてアナウンスされていることから、世界ブランドのエクステリアデザインと言えるでしょう。まさに世界戦略車としての風格を十分に醸し出しています。
試乗させて頂いたグレードは350GTスポーツパッケージで、19インチのアルミホイールが標準装備されているものでした。試乗前に車外から眺めた時点では、車格の大きさ、腰下のボリュームなどから、19インチという大きなホイールでもさほど大きさを感じませんでした。しかし、一度路上に出て他のクルマと見比べると、その大きさを実感すると共に、標準装備とは思えないフーガのエクステリアに一種のステータスさえ感じられます。
■静と動の調和・・・インテリア
インテリジェントキーを預かり、ボタン一つでドアロックを解除、ホールド性の良い本革シートに腰を下ろします。高級車の持つ雰囲気なのでしょうか、少し冷めた、どことなくしっとりとした空気に包まれます。フーガのスターターはキーシリンダーを回すのではなく、まるでレースカーのようにスタートボタンを押してエンジンを始動させます。その瞬間、シートとステアリングのポジションがメモリーされていた位置に自動調整され、メーターはフルスケールまで表示した後に通常位置まで戻されます。「シート調整」や「丸い針のメーター」といった、行動や見栄えはあくまでアナログなものに対し、その動きは極めてデジタルで機械的な演出は、運転好きの人間にはたまらないものになっていると思います。まさにフーガのコンセプトにある「人間の気持ちに高揚感を呼び起こす」演出の一つでしょう。高級感のある静粛なインテリアデザインのなかに、ドライバーズシート周りだけはまるで別世界のような「走り」を感じ、運転の好きな人のために作ったクルマなんだなぁと、実感します。
運転者に合わせたポジションをメモリーする「パーソナルドライビングポジションシステム」は2個のキーを識別し、それぞれのキーに合わせたポジションに自動調整し、エンジン停止後は乗降し安いようステアリングを跳ね上げ、シートを最後部まで引き下げます。とてもメカニックで乗り降りが楽く、ボタン式エンジンスターターと共にこれは病み付きになりますね!欲を言えば、エンジンスタート時に一瞬、シートなどの自動調整が一時停止するのがチョット残念で、全ての動作がスムーズに動作するようになればと思います。
これらの装備を見ていると、将来的にはシートベルトか、体をサポートするバーが自動でセットされるようになるんだろうなと想像してしまいます。
その他室内には快適装備が満載ですが、とりわけ室内の広さには感心します。前回試乗のムラーノと言い、このフーガと言い、昨今の日産車の室内空間には「さすが!」と言うしかないですね。ライバル車を上回るのは当たり前、クラストップの「ゆとり」を手に入れてるように思います。
■動いた瞬間からわかる動力性
大型の高級セダン。ラグジュアリー。ドッシリとしたエクステリアからイメージするクルマの動きは、過去の経験やイメージから無意識に体へインプットされているものなのでしょう。今回フーガの試乗でも、知らず知らずに作り上げていたイメージが自分にもあったと思うのですが、フーガのアクセルを踏んだ瞬間そのイメージは覆され、ステアリングを動かした瞬間新たなイメージがインプットされました。日産車のコンセプトはどの車もとても分かりやすく、求めるものの表現が直接的で明確的になっていると常々思っていましたが、このフーガの目指す走りの理想が「運転が好きな人が毎日乗っても常に楽しくドライビングできる」と言うことが、瞬時に伝わったような気がします。試乗車を駐車場から動かした瞬間「おや?」・・・安城のギャラリーから一般道に左折した瞬間「これは楽しいかも!」と、思わず笑みがこぼれてしまいました。その短時間で?と疑問に思う方も多いかも知れませんが、試乗した多くの方に納得して頂けると確信しています。
アクセルから伝わるエンジンレスポンス、路面に伝わるパワー、クイックリーなハンドリング、十分なブレーキ性能、どれをとってもスポーツカーに引けをとらないもで、ワインディングではついついアクセルを踏んでしまいたくなる衝動に駆られます。確かに運転が楽しくなるクルマだと実感しました。また、山道で少し走ってみても、助手席の人間でさえ不安感が無いようです。これはロールのほとんど無いフラットライドなコーナリングがクルマの安定感を保ち、乗る人に安心感を与えているのでしょう。フェアレディZと同じプラットフォーム、新開発のフロントダブルウイッシュボーンに新開発のショックアブソーバー、ハイキャスが進化したリヤアクティブステアなどなど、この足回り、絶賛したいです!
■GTとXVの違い
先にスポーツ志向のGT、ラグジュアリー志向のXVと書きましたが、基本的な性能はほぼ同じもののようです。強いて言うならば350GTスポーツパッケージのみ19インチホイールと専用サスペンション、リアアクティブステアを装備し、より走りを重視した仕様となっているのみの様です。ではなぜGTがスポーツ志向、XVがラグジュアリー志向なのかというと、GTにはシャープなヘッドライト、ガンメタリックの引き締まったフロントグリル、スカイラインを思わせる丸形のLEDテールランプなどスポーティーなディテールを多く含んだエクステリアとなっており、それに対してXVでは大型のヘッドライト、メッキグリルによる高級感、インフィニティQ45を思わせるテールライトなど落ち着いたイメージを受けるところからです。ですから外観の少しの違いで、スポーツ志向、ラグジュアリー志向と表現したもので、どちらも走りや運転の楽しさを表現したスポーツセダンであることには変わりありません。
■ITSによる安全運転の支援
ITSの取り組みと言えばナビゲーションシステムの高度化やETCによる自動料金収受システムなどが有名ですが、ITSの最先端技術としてフーガには安全運転の支援システム「インテリジェントクルーズコントロール」がオプション設定されています。これはクルーズコントロールに低速追従機能が組み合わさったもので、クルマを一定速度に保つだけでなく、先行するクルマとの距離を認識し、一定の車間をも保つ機能を有しています。また、ある程度の減速を自動で行ってくれるのですが、ブレーキ操作が必要な場合などはブザーにより運転手に注意を促します。クルーズコントロールから低速追従機能までがシームレスに行えるのがこの「インテリジェントクルーズコントロール」の特徴で、話題性だけでなく「実際に使える」クルーズコントロールに仕上がっています。先日名古屋で開催された「ITS世界会議名古屋」において、日産のブースではフーガの展示と共に「インテリジェントクルーズコントロール」の説明が行われていました。どこのメーカーもそうですが、このクラスのクルマにはメーカー最先端の技術が盛り込まれています。
■好調な受注
10月14日に発売となったフーガですが、発売から1ヶ月の受注が月販目標の5倍となるほど好調のようです。実は11月の初旬、日産栃木工場のテストコースに伺った際、フェアレディZの生産ラインを見学する予定が、フーガの増産体制でラインが全てフーガとなっており、見学自体が中止となってしまいました。工場の敷地の中ですれ違う新車のほとんどがフーガだったことは言うまでもありません。日産の方も緊急な対応であるとコメントされていました。この出来事は私がフーガを試乗する前の事でしたので、一層フーガの試乗が楽しみになり、試乗後はこの好調な受注を納得させられるものでした。
■_SHIFT 〜クルマのカテゴリーにおいて
前回のムラーノの試乗記で、クロスオーバーUSVはセダンを凌ぐ勢いになる予感がするとコメントさせて頂きましたが、今度は高級セダンがこの運動性能を手に入れスポーツセダンとなる・・・・と考えると、クルマって全てのカテゴリーにおいてシフトしているのではないかと感じます。スポーツとラグジュアリーを見事に融合させたフーガ。クルマとして高次元で完成されたクルマだと思います。
■RJCカー・オブ・ザ・イヤー受賞
日本自動車研究者・ジャーナリスト会議が主催する「RJC カー・オブ・ザ・イヤー」をフーガが受賞しました。評論家、ジャーナリスト、自動車工学の研究者による、技術など自動車そのものに焦点を当て選定されるものの様です。

Y50 フーガ試乗記