B30 ラフェスタ試乗記
(2004年12月24日記)

新しいクルマが発売されたときや、興味を持ったクルマの資料を手に入れるときにはいくつかの方法があります。販売店に行き実車を目の前にしてカタログなどと見比べるのが商品を知る一番の方法だと思うのですが、昨今ではインターネットが普及しWEBカタログでその情報は余すことなく手に入れることができます。更に、そのままカタログ請求などもでき、非常に便利になってきたと思います。

私自身も、毎回試乗車が決まったとの連絡を頂くと、その車のWEBカタログを確認しカタログ請求を行います。そしてある程度情報を得た上で試乗をさせて頂く事になるのですが、今回の試乗車である「LAFESTA(ラフェスタ)」をWEBカタログで見たとき、このクルマの車格がどうしても掴み切れませんでした。それはカタログが郵送された後も同じで、クルマの大きさに対する窓のサイズやミラーの大きさなど不思議なバランスに見えたのです。もちろん数字上でサイズ等を確認することはできるのですが、それでもなお実車を目の前にするまで違和感を感じていたのは事実です。

試乗に当たり、あらためて実車を目の前にした感想は、とても「コンパクトなクルマ」と言う感想でした。それでも、クルマの全高が低いことや窓のラインが低いなど、今までのクルマのバランスとは何処か違う印象を受けます。

ラフェスタは全て新開発の2000cc-DOHCエンジンとミッションにエクストロニックCVTという構成で、ラインナップとしては「20S」「20M」「PLATFUL」の3グレード、そしてそれぞれに2WD、4WDの設定があります。今回試乗させて頂いたのは2WDの「PLATFUL」と言う装備が充実したモデルのものでしたが、「20S」から「PLATFUL」までの価格差はわずかなもののようです。

■カテゴリーはミニバン?
ラフェスタのカテゴリーはミニバンに位置します。しかし、エルグランドやプレサージュのように大勢で出かけるミニバンと言うよりは、ファミリーユースのタウンカー的な用途を前提としているようです。コンパクトなボディもそのためで、小回りが利き、街の中でも十分使い勝手が良く、気軽に扱えるように考えられています。また、従来のミニバンにおいて、最前列に比べ2列目、3列目の開放感が犠牲になっていたことを解決するべく、乗る人全てに開放感を感じてもらうというコンセプトを掲げ、全車に標準装備されているパノラミックルーフを始めとする様々なアイデアが盛り込まれました。これらのことを踏まえ、私の感じた「ラフェスタ」をレポートさせて頂きます。
■昔ながらの「日産らしさ」を感じるエクステリア
多くの方が感じると思いますが、外観の第一印象は「四角い」クルマではないでしょうか。窓を大きくレイアウトするため必然的にこの様な「四角い」デザインになったのだと思いますが、とても今風と言いますか若者向けと言いますか、年配の方には受け入れられにくいデザインのようにも思えます。また、このクルマのデザインを見たときに、一見して日産車と分かるブランディングデザインとは別に、昔から日産が持っている「日産らしさ」をとても感じました。フロント周りは昨今の日産車の共通したデザインであるのに対し、リアのデザインはとても特徴的で、遊び心豊かな昔ながらの日産をイメージしずにはいれません。もちろん、そのイメージは最新のディテールで構成されているのですが、その二つの特徴が組み合わさり、まるでヨーロッパ車っぽいイメージさえ受けます。ラフェスタは、クルマの持つ実用性と共に、ファッション性を重視した人たちに人気が出そうなデザインと言えるでしょう。

■視認性の良いドライバーズシート
ドライバーズシートは少し深めでホールド性が良く、低発砲のクッションに座っているような感覚さえ受けます。また、シートの前後長が長いため、足を楽にサポートし、長時間の運転にも疲れにくい形状であると感じました。ただ、ヘッドレストが低くく、調整しないと背中に当たり違和感が感じられます。しかし、ヘッドレストが軽く上下するため、自然に適当なポジションになじむようです。狙ってそうなっているかどうかは不明ですが、気が付くと頭にフィットしています。

さすがにドライバーズシートでは、パノラミックルーフの恩恵は得られませんが、目の前に広がる視界は広く、大げさなようですが地面が眼下に見えると言っても過言ではないほどで、身長170cmの私ではボンネットが見えないほど視認性が確保されています。また、両サイドの視界も良好で、中でもドアミラーの大きさは非常に使いやすく、取り付け位置が低いため運転中も違和感を感じないものとなっています。このドアミラーを外から見たときには、クルマのバランスから見て少し大きいのではないかと思う印象は受けますが、運転すると非常に視認性の良いものとなっています。

ラフェスタは室内空間を広く確保するために、「電動パワーアシストシフト」を採用しています。試乗前は、上下に動かすシフトレバーに抵抗感がありましたが、実際に使用してみると通常の前後運動に使う力と同じような感覚でシフトチェンジすることができました。このシフトレバーはとてもコンパクトで、今後更に小さく、それどころか今までとは全く違った構造になっていくのであろうと思わせるほどのものです。ここまで小さければ、あえてレバーじゃなくても良いように思えますからね。

■居住性の良いセカンドシート
エルグランドと同じように、Bピラー(最前列とセカンドシートとの間に位置するピラー)が随分と前方にレイアウトされているため、セカンドシートからの視界はとても大きいものになっています。しかも両サイドの窓が大きく低い所はラフェスタの持つ特徴の一つでしょう。その他にも、プレサージュで採用されていたフロントシート後部の丸みを帯びた形状は、後部空間に圧迫感がない様に考えられ、ヘッドレスト自体を小さくすることにより、後部からの視界に与える影響を低減しているようです。また、パノラミックルーフと大きな窓により、ラフェスタ以外では得ることのできない明るく開放的な空間を創造しています。

シートアレンジで「ベビーフレンドリーモード」と言うレイアウトがあるのですが、通常は助手席をテーブルにし、セカンドシートを前方にスライドして使用するものです。使い方はカタログなどで紹介されていますが、これに似たチョット違う使い方をしてもおもしろいと思いました。助手席をテーブルにしたまま、セカンドシートを下げると、その位置には夢のような空間が出来上がるのです。テーブルの下にはオットマンを思わせる空間が存在し、まさに特等席!足をのばして座ることができ、しかも絶好のロケーション、一度おためしあれ。

■開放感は抜群のサードシートだが・・・
ラフェスタのサードシートでは、パノラミックルーフ、フロントガラス、両サイドの大きな窓が見渡せると共に、後方のリアウインドウと相まり、開放感を一番感じる場所だと思います。高速移動中、実際にサードシートに座ってみたのですが、今までにないほどの開放感と共に、目の前に広がるビジュアルに驚かされます。しかし、パノラミックルーフのシェード収納場所を確保するため天井は低く、しかもフラットなシートで長時間の移動には不向きな場所かも知れません。あくまでもサポート的なシートと考えておいた方が良いでしょう。

ラフェスタは、マックスで7人までのれるシートレイアウトですが、通常は5人、楽に4人といったところだと思います。通常、夫婦と子供1~3人の家族にはピッタリ、たまに友達の子供たちも一緒にお出かけ、お爺ちゃん、お婆ちゃんと買い物・・・など、そう考えた場合にこのラフェスタは、居住性抜群、類を見ない快適な移動空間となることでしょう。

■開放感をシフトする
先にも書きましたが、ラフェスタにはパノラミックルーフが全車に標準装備されています。開放感をシフトするというコンセプトの一番の立役者はもちろんこのパノラミックルーフなのですが、決してそれだけではなく付随するフロントガラスやサイドウインドウの大きさ、そしてリアガラスの視認性の良さなど全てにおいて開放感を演出する重要なファクターとなっているのです。実は、ルーフシェードを閉めると開放感が失われるかと思っていたのですが、逆に両サイドの窓の大きさを認識することができ、パノラミックルーフが無くてもこれほどの開放感があるのかと感心させられました。常に屋根を開けていると気付きにくかった事なのですが、窓の大きさから得られる開放感も十分あるようです。
■開放感、さらに・・・
開放感をシフトする為に盛り込まれたアイデアは更に、開放感という車中から感じるものに留まらず、車外の天気、朝日や夕日などの移りゆく時間、紅葉や雪などの季節をも車内に取り入れ、乗る人の感覚を常に刺激する最高のアイテムとなることでしょう。また、シェードのオープン、クローズを使い分けることにより常に2つの空を手に入れる事が可能で、その時々のシチュエーションに合わせて自由に選び、使い分ける事ができるなど、パノラマルーフを標準にしている意味はとても大きいと思います。

■次世代グローバルエンジン搭載
ラフェスタは全て新開発の2000cc-DOHCエンジンが搭載されています。このエンジンは、今後ルノーでも採用される予定の次世代グローバルエンジンだそうです。とても静かで中低速を重視した扱いやすいエンジンとなっています。軽いアップダウンのある山道の国道を流すには、とても気持ち良いフィーリングを味わうことができます。タウンカーとしては十分以上のスペックかも知れませんが、フル乗車を想定した場合の対応、そして長距離でも疲れないよう考慮されたものでしょう。また、決してスポーティではないのですが、少し堅めで安心感のあるサスペンション、そのお陰でハンドリングも素直な印象を受けました。コーナリング中もロールをシートのホールド性でカバーし、体が安定している事によりとても安心感が得られました。

グレードの中で「20M」は、ステアリングシフトやアルミロードホイールを採用し、走りを楽しむモデルとして設定されています。

■オプション装備について
試乗したラフェスタには、メーカーオプションのバックビューモニター、サイドブラインドモニターが取り付けられていましたが、2日間の試乗中ほとんど使うことはありませんでした。実際にバックする際、モニターを使わなくても不自由しないほど視認性が良く、乗用車やコンパクトカーと同じような感覚で操作できます。もちろんバックビューモニター、サイドブラインドモニター共に、直下の安全性を確認するにはとても有効であることは間違いありません。この辺りもカタログだけでなく、十分に実車を確認した上で決定することをお勧めします。
2日間の試乗を終えて感じたことは、居住空間に制限のあるコンパクトなボディであっても、乗る人に開放感をもたらし気持ちを解き放つ事により、クルマの周囲をも一つの居住空間として取り込むことができるのだと感じました。そこには実際の空間以上に、雄大な移動空間が存在するのです。