Y12 ウイングロード試乗記
(2005年12月21日記)

2005年11月14日、日産のコンパクトワゴン「ウイングロード」が登場しました。先代ウイングロードの登場から4年でのフルモデルチェンジ、先代のウイングロードは全体的にシャープなイメージで、落ち着いた都会的雰囲気がありました。今回登場のモデルで3代目となりますが、先代よりもさらに洗練され、かつ楽しさを前面に押し出したものとなっているようです。カタログの造りからも解るように、両面が表の構成で片面は通常のカタログと同様スタイリングや機能、装備を中心としたもの、そしてもう片面からは、使い勝手や楽しさ、シチュエーションに合わせたイメージなど、今はもう見ることの少なくなったレコードの両A面のような仕立てとなっています。
日産のラインナップの中でワゴン車と言えば、ステージア、プリメーラワゴン、アベニール、ウイングロードと名前が浮かぶのですが、調べてみると現在発売されているワゴン車は意外にもステージアとウイングロードのみでした。そのうち比較的若者に人気が高いのが今回のウイングロードとなっています。

今回試乗させて頂いたのは、1.5リッターのエアロバージョン。エアロをまとっているため、かなりスポーティに見えます。私の年代からすると、ワゴン車と言えばどうしてもビジネスカーというイメージが強く、今でも少なからずそのイメージが抜け切れずにいます。ただ、そのイメージはボンネットが長く、セダンに荷物が載るように後ろ半分を荷台にしたというもので、実用性重視で乗り心地はもとより居住性など二の次になっていたものでした。しかし今回のウイングロードは、昔のスタイリングから比べるとボンネットも短く、バランス的にはセダンの変形と言うよりはミニバンに近い形状をしています。また、背の低いRV車という言い方も出来るかも知れません。とは言うものの、20年ほど前のサーフ&スノーブームのころから、ワゴンにキャリアを付けたクルマが若者に人気があったのも事実で、「サーファー=ワゴン車」の構図もあり、その当時から使い勝手自体はRV車と同等であったのかも知れません。
■チョット落ち着きのないスタイリング
フロントはフーガの様なシャープでスポーティーな顔立ち、ボンネットより上に膨らんだフェンダーは同じくフーガやスカイラインを思わせ、「走り」を感じさせるものとなっています。さらに特徴的なのはサイドから見たときの窓の形状で、ルーフ自体は真っ直ぐなものに対し、窓枠の上部が波打つような独特の形状を持ちます。今回このラインがとても目立って見えますので新たに採用されたデザインなのかと思えば、この形状は前モデルでも気持ち採用されており、2代目から3代目に強調された形で受け継がれたディテールとなるようです。ただ、デッキ前方は丸みを帯びた柔らかな形状に対し、デッキ後方では直線的に流れるシャープさがあり、このクルマを前方から見たときと後方から見たときではかなりのイメージの違いが感じられました。クルマ全体をトータルで見た場合、フロントのスポーティーさとデッキの可愛らしさ、リアサイドのシャープさとリアコンビネーションランプの丸さ等が組み合わされたチョット落ち着きのないデザインは、遊び心を挑発するこのクルマのコンセプトに合っているのかもしれません。
フロントのコンビネーションランプにはコーナーリングランプが配置されており、ステアリングを切った方向が明るく照らされます。ウインカーに連動したコーナリングランプは珍しくないのですが、フーガやこのウイングロードではステアリングの切れ角に反応するタイプとなっています。ただフーガのようにライトの光軸自体が移動するのではなく、ウイングロードでは単純に専用ランプが点灯するもので、話題性から言うとフーガの方式に軍配が上がりますが、実用性とコストを考えるとウイングロードの方式が一般的でしょう。全てのクルマに欲しい装備の一つです。
■光の演出、楽しさのインテリア
車内の至る所にシルバーの部品が多く、またその面積も大きく、車内がとても明るく感じられます。このシルバーの部品は、晴れた日は外の光を車内に取り込み、爽やかさを車内全体にもたらします。また曇り空では淡い光、夜のドライブでは街路灯やネオンの光さえも車内に取り入れることとなり、走りながら乗る人に楽しさ感じさせるものとなっています。
シートは少し小振りですが、厚みがありしっかりとした座り心地で、シート位置が高く、これもスタイリングと同様に乗用車感覚と言うよりはミニバンに近いシートポジションであると感じました。また、ダッシュボードにも厚みがあり位置も高く、安定感と共にイメージ的にもRV車をイメージさせるものとなっています。そんな中、メーターパネルはホワイトメーターに近いカラーリングとなり、スポーティー感を演出、メッキの縁取りとともにシャープなイメージを与えています。
ダッシュボードの厚みに比例して、エアコンの吹き出し口はとても大きく、ダッシュボードのデザインのなかで大きな存在となっているのですが、スキー場で車内をすぐに暖かくしたい場合や、海ですぐに涼しくしたい場合など、ウイングロードの広い車内では視覚的にとても頼もしく見えます。
センターコンソールのスイッチ類はとてもシンプルで、エアコンのスイッチも3つのスイッチで全てを制御し、オーディオ部に最小限のボタンがある他、ハザードのスイッチ以外ほとんどボタンらしいものがありません。またコンソールもシフトレバーのみとなっています。
■次は自動で元通りになるシート?
シートアレンジでは、既にラフェスタである程度完成されていたと思っていたのですが、また一工夫加わっています。なんと、リアゲート位置から助手席が前に倒れるというもの。長尺ものの荷物空間を僅かツータッチで得ることが出来る優れ技が盛り込まれました。ワンタッチでリアシートが前に倒れフラットに、ツータッチで助手席が前に倒れます。試乗初日、このボタンは何だろう?と知らずに押すと助手席が倒れて正直驚きました。
リアゲートは軽くあけることが出来、閉めるときも意外に軽いものでした。ラゲッジルームの床面は高めで、荷物の出し入れに余分な上下運動が無く、腰を痛めなくて済みそうな高さであると感じました。その下には取り外し可能で丸洗いも出来る大きめのアンダーボックスなどがあり、使い勝手はかなりよさそうです。また、車外から腰を下ろすのに便利な簡易シートがレイアウトされていますが、スキー靴を履く場合などにはとても便利でしょう。さらに嬉しいことに収納可能なトノカバーが付き、ラゲッジスペースの遮へい性を高めています。考えてみればワゴン車でトノカバーが着くものは珍しいのではないでしょうか。
リアシートは前後スライドすると共に、リクライニングさせることも可能で、リアシートの居住性も非常に良いものとなっています。これだけシートアレンジが完成されたものとなってくると、後は倒したシートを自動で元通りにするシステムなんかが出てくるのかもしれません。
■1.5リッター&1.8リッター、お勧めのパワーユニットは?
試乗車は1.5リッターエンジン+エクストロニックCVTの組み合わせのものでした。この組み合わせはノートやティーダなどでその実用性は実証済みで、実際このウイングロードに関しても特に低速域での使い勝手は素晴らしいものでした。しかし、ノートやティーダと比べて気になったのが高速域での頼りなさと言うかパワー不足が感じられ、CVT特有のいやらしさ(クラッチが滑るような感覚)を味わうこととなりました。同時に高速域でのエンジン音も大きく感じ、これらはノートやティーダでは全く感じなかった事でしたので、これは車重の差によるものなのかと思いつつ調べてみると、車両重量でノートより170kg、ティーダより110kgも重いことが判明しました。これではさすがに厳しい部分もあるなと思いながらも、低速域では全く重さを感じさせないセッティングに、普段の使い勝手では十分なのかも知れないと思ったのも事実です。
ウイングロードには1.8リッターモデルもあり、海や山への遊びを想定するなら、こちらの方がお勧めでしょう。なぜなら、山にスキーに行く場合では、それなりの距離を走ることとなる上、最終的には山道を登って行かなくてはならなりません。また、海に行くにもそれなりの距離を走ることを思えば、1.8リッターモデルの方がこのウイングロードのコンセプトにも合っているように思えます。もちろん山や海だけが遊びの場所とは思っていないませんが、遊びに行くのに仲間は多い方が良いでしょうし、その場合フル乗車する機会だって多いはずです。
2WDを選ぶか4WDを選ぶかは本人の使い勝手によりますが、スキー場の新雪を走破することや、砂浜を走り回ることを考えなければ、大抵の場所は4WDでなくても不便は感じないはず。もちろん4WDであることの安心感や走行性能は2WDに比べ格段に違うので、4WDを選択する価値はあるでしょう。
■私の好きな足回り
乗った瞬間、日産らしい?乗り心地だなと思いました。そしてコーナリングはとても素晴らしい仕上がりになっています。コーナリングはとてもフラットで、山道などではついついペースが上がってしまいます。普通に運転しているとチョットシビアなハンドリングだなと感じますが、オーバースピード気味でコーナーに侵入しても、しっかりと踏ん張りますし、逆にとても素直に扱うことが出来ました。この足回りは私の好きな足回りで、走るのがとても楽しくなります。ワゴンタイプであるため少なからずビジネスカーとしても採用されると思いますが、このクルマを手にしたビジネスマンは、毎日の運転が楽しくなり仕事に対しての志気も上がるのでは?などととも。
乗り始め少しブレーキの効きが甘いと感じましたが、グッと踏めばグッと効きます。頭からガツンと効くようなブレーキではないのですが、なにやら乗員数に応じて制動力を配分するアシスト機能がついてるそうです。
■今回試乗したウイングロードには、ディーラーオプションのHDDナビが搭載されていました。カーウイングス対応であったため、日産オリジナルであることは間違いないようです。このナビ、カーウイングスが搭載されていることでも解ると思うのですが、クルマの情報からオイル、タイヤの交換時期まで管理することが出来る多機能なものとなっています。おまけにタッチパネルで操作性も良く、専用コードで話題のiPodを接続することも可能。もちろんiPodの操作もタッチパネルで行います。メーカー純正に近いオーディオでiPodに対応したものはまだまだ少ないのですが、携帯音楽ツールの世界シェア6割以上を誇るiPodには今後も対応製品が続々と登場することでしょう。今回実際に使ってみましたが、実に便利です。タッチパネルでの操作も直接的で解りやすく、iPodオーナーでなくても操作が可能なものでした。ただ一つ、iPodをダッシュボードに入れて接続するのにはチョット不満が残ります。今後の要望として、常に携帯、移動させるアイテムをわざわざしまい込むような接続方法を取ることはせず、瞬時に抜き差しが出来るDock方式をコンソールの辺りに採用、もしくはコードレスで接続出来るようになることを希望します。
■幅広い年齢層に受けている
日産自動車は、新型『ウイングロード』の1カ月間の累計受注台数が月販目標の2倍以上になったと発表しました。購入者の年齢層は20代から50代にまで渡り、幅広い年齢層に受けているようです。クルマで遊びに出かけるのは20代だけでなく、昨今では釣りや山菜採りなど幅広い年齢層がアウトドアを楽しんでいることから、このような結果が出たのではないでしょうか。また、エアロ装備のグレードが最も人気で、オプション装着率でも、ルーフスポイラー+LED式ハイマウントストップランプ、フォグランプ、16インチアルミロードホイールと、スタイリングにこだわるオプションが高い装着率となっています。
2日間の試乗で、このウイングロードはワゴン車と言うよりは「小さめで小回りのきくミニミニバン」、もしくは「扱いやすく背の低いRV車」と言うようなイメージを受けました。しかも走りを楽しくさせる足回り、楽しさを演出する車内空間、楽しさをサポートする機能など、あらゆる角度から楽しさを盛り込み、機能で遊びをシフト"SHIFT_FUNction"する、スタイリッシュワゴンとなっています。

Y12 ウイングロード試乗記