J10 デュアリス試乗記
(2007年7月25日記)

Highslide JS今回の試乗記は、今年5月23日に発売されたミドルサイズクロスオーバーSUV「デュアリス」です。「デュアリス」は、欧州で今年の2月から発売されている「キャシュカイ」を国内販売するもので、「スマート&コンパクトクルーザー」をコンセプトに、ヨーロッパの拠点を中心に開発されました。だた「キャシュカイ」と言う名前が日本では親しみにくいと言うことから「デュアリス」と名称変更されているようですが、車そのもの、保安部品以外は全く「キャシュカイ」と同じもののようです。

この「キャシュカイ」は、「ヨーロッパ新車アセスメントプログラム」の乗員保護性能で過去最高得点を獲得し最高ランクの5つ星を獲得しました。付け加えるなら、チャイルドプロテクションについても4つ星の高評価を受けており、現在まで、小型ファミリーカーのカテゴリーで最高ランクの5つ星を獲得した車種は他にないとのことです。

英国日産サンダーランド工場で生産される「デュアリス(キャシュカイ)」、2月に欧州発売、5月に日本発売され好調な受注を受けていることから、欧州でも日本でもとても人気が出てきているようです。

■欧州で生産される意味

「デュアリス(キャシュカイ)」はハッチバックとSUVとのクロスオーバーSUVとして、新たなポジションを狙ったものです。元々欧州ではハッチバックの需要が高いので、利便性の高いハッチバックのオンロード指向にSUVの走破性をプラスした「デュアリス(キャシュカイ)」は、欧州で人気が出ることは納得できます。
さて、「デュアリス(キャシュカイ)」は欧州で生産されています。ヨーロッパの拠点を中心に開発された車ですので、コストの問題や車両開発のことを考えても当然のことでしょう。地域に密着した開発と生産、そう、「デュアリス(キャシュカイ)」は全くの欧州車なのです。その欧州車を日本の保安基準だけクリアーできるように変更した輸入車と考えて良いと思います。日本のメーカーでも海外生産したものを逆輸入するケースもありますが、その場合のほとんどが日本人好みの仕様に変更される場合が多いそうで、現地販売の車と日本で販売する車の乗り心地が違うことが多いようです。もちろん欧州と日本ではユーザーの好みが違うということでの対応となっていますのでこのあたりはメーカーの考え方によるかと思います。
欧州車の走りには興味があるが、メンテナンスや部品の調達が心配という方には、この「デュアリス」、「日本で安心してメンテナンスが受けられる欧州車」といった感覚でしょうか。

■さっそく試乗開始!

シートの座面は大きめで、少し固め。少々ポジションに拘りたくなるホールド感に、スポーツカー的な感覚がありました。まず高速道路での試乗ですが、その第一印象は「運転が楽(らく)」と言うことでした。この感覚は、車の総合的なバランスの良さからくるものだと思います。全く意識しないで普通にまっすぐ走る車で、とても直進安定性が良いと感じました。更に、路面のつなぎ目によるショックの伝わり方が柔らか、車線変更もスムーズ且つ滑らか、車高の高さを全く感じさせない安定した走りに驚いてしまいました。高速域での足回りの良さは素晴らしいですね。また、ふと気がつくとこの車はとても静かで、エンジン音、風きり音、排気音、ロードノイズがほとんど気にならないくらいです。特にSUVのような大きなタイヤを装着している場合、ロードノイズにおいて非常に不利なはずですが、純正タイヤのチョイスもベストマッチだったのでしょう。
試乗当日は雨で風も強かったのですが、そのことを一切感じさせない安定した走りには今までにないSUVの居住性、足回りを感じたと言っても過言ではないと思います。SUVと言うよりも、普通乗用車を運転している感覚です。

高速道路では視界が一定なので、視点の高さを忘れさせ、まるでセダンを運転しているようです。背の高い車を運転しているというよりも、もっと車高の低い車を運転していると思わせるほどすばらしい足回りで、高速域でのセッティングは素晴らしい!の一言でした。

例えば、対面通行の高速のトンネルの中などでは案外緊張を強いられるものですが、緊張なく安心して走行することができるのです。横風の影響も少なく運転以外の影響で強いられる要因が少ないため、余計なところに神経をとられず、結果的に運転が楽だと思えるのでしょう。

■一般道に下りてからも

高速では車高の高さをさほど感じませんでしたが、一般道に出るとさすがに背の高さを実感します。しかし、これは視点の高さのみであることにすぐに気がつきます。山間のワインディングに入り、確実に路面をトレースする足回り、安定した走りを見せる「デュアリス」は、ここでもその車高の高さを感じさせませんでした。一般道でも更に運転が楽しくなる、ついついアクセルを踏んでしまう・・・そんなクルマです。

■エクステリア

「デュアリス」のデザインは、足下を隠せば普通のハッチバック車のようなデザインになっています。ボディーが薄く、足下の大きさでSUVの力強さを表現しているようですが、SUV独特の重量感は少ないように思えます。また、オフロード系のクルマには、全体的にメカメカしいというかメカニックというか、そのような作りのものが多いのですが、そんな中でデュアリスは都会的でモダンなイメージ(アーバンチックなイメージ)を受けました。日産の中ではムラーノも同じようにアーバンチックなものなのですが、「デュアリス」はアーバンチックな中にも少々躯体の強固さを感じさせます。この「デュアリス」は、本格的なオフロードではないのですが、少々乱暴に扱っても耐えうる様なデザインで、特にボンネットのプレスラインなどはクルマの頑丈さを強調しています。

■インテリア

先にも書きましたが、シートは大きめでシッカリしたホールド感があります。ヘッドレストの大きさが特徴的なのですが、これは追突時に衝撃を軽減するアクティブヘッドレストとなっています。シート自体に堅さがあり、シートポジションの微調整に拘りたくなるシートでした。しかし、一度セットするととても居心地の良い安定したホールド感を得られます。

ラチェット式のシートリフターによる調整幅が非常に大きく、一番上まであげると身長170cmの私ですら天井に頭がついてしまうのではないかと思うほどで、ボンネットのかなり前まで視界が広がります。ダッシュボードも上から見下ろすほど。逆に一番下まで下げるとボンネットは全く確認できないところまで下がってしまいます。これにより、ダッシュボードが高くスポーツカーのような低い視界と、SUV独特の上から見下ろすような視界の両方を、シチュエーションに合わせて調整することもできるでしょう。残念ながらワンタッチというわけにはいきませんが、市街地ではシートポジションを高めに調整することで良好な視界と取り回しの良さを得、高速域ではシートポジションを低めに調整することで安定した走りを得ます。

ダッシュボードは高く、SUVならではの存在感があります。しかしそのデザインは至ってシンプルで、所々にあしらわれたスモークシルバーのパーツがとてもよいアクセントになっています。更にディテール自体もシンプルでこざっぱりとした印象を受けます。その反面、メーターパネルデザインはとても凝ったデザインで、パーツの一つ一つにチョットした拘りが見受けられます。全体的に都会的なイメージでメカニカルなディテールとなっています。

20Gには標準でスタイリッシュガラスルーフが装備されています。日産ラフェスタでお馴染みとなった開放感あふれるガラスルーフですが、ラフェスタのそれよりも若干スモークがきつい様にも思えます。ただしこちらも、この開放感を得られるのは後席のみとなりそうですが、ガラスルーフは個々の開放感だけでなく、車内を明るく開放的な雰囲気にすることで空間自体を楽しくする効果は絶大でしょう。

このクルマは欧州車であると冒頭で書きましたが、ウインカーの音までも欧州車っぽい(堅い音)音となっているようです。

少し気になったのは、アクセルの上部空間が少々狭いようで、大きめのシューズなどを履いている場合は若干干渉する場合があり、気になる場面があるかもしれません。

■エンジン

欧州で発売の「キャシュカイ」はガソリン、ディーゼル合わせて4種類のパワーユニットがあるようですが、日本販売では2.0リッターガソリンエンジン+エクストロニックCVT-M6の組み合わせのみとなっています。

2.0リッターガソリンエンジン+エクストロニックCVT-M6の組み合わせも良く、CVT特有のいやらしさはとくに目立たなかったのですが、車重もあるようなのでもう少し大きな排気量、たとえば2.3リッターもしくは2.5リッターエンジンを望むユーザーの声が聞こえてきそうな気もします。ただ、パワーにものをいわせた瞬発力は無いと言った程度で、通常利用においてパワー不足を感じたわけではありません。

■期待を裏切らなかった足回り

実は試乗前に「デュアリス」の情報を探しているとき、一番気になったのがザックス製のダンパーを使うサスペンションであるということでした。このダンパー、F1やWRCなどモータースポーツの現場でもシェアが高く、ポルシェやベンツ、BMWなどの有名ヨーロッパ車の純正ダンパーとしても採用されているもののようです。これほど評価が高いダンパーですが不思議なことに、今まで日本で販売される日本車で採用したモデルは無いということでした。「デュアリス」はこのザックス製のダンパーを使うサスペンションを採用したと言うことを聞いていましたので、試乗当日までワクワクしていました。
結果は言うまでもなく素晴らしいもの!運転していることがとても楽しいの一言!!期待が高いと逆にさめてしまう場合も多々あるのですが、「デュアリス」の足回りは全く期待を裏切りませんでした。もちろん、ダンパーだけでこの足回りが手に入るとは思っていないのですが、国産車にももっとザックス製のダンパーが採用されても良さそうなのにと思うのは私だけでは無いと思います。
しかし、良い部品を使っただけで良い車が創れるとは限りませんので、素晴らしい足回りに、それを支えるボディ剛性、ドライバーに伝えるパワステのセッティングやシートの選定などなど、すべてが逢い待った結果が「デュアリス」の素晴らしい走りと言うことでしょう。

ただ、本格的なオフロードというわけではありませんので、オフロードの激しい段差などでは若干の不安があったのも正直なとことです。

■4WDの選択

「デュアリス」にはFFと4WDの2タイプが用意されていますが、売れ筋は2WDとなるでしょう。「デュアリス」の性格から言うと「メインはオン、しかしオフも楽しめる」と言った使い方をされる方が多いのではないでしょうか。その場合、悪路を走破するというシチュエーションは少なく、2WDで十分と思います。しかし、搭載されている4WDはアテーサで、AUTOポジションにセットしておけば通常走行ではフロント100%のFF走行から路面状況により、リアに0〜50%の動力を配分(マックス/フロント50%:リア50%)する仕組みとなっています。R32-GT-Rのアテーサ4WDからの技術でしょうから、常に4WDをAUTOにして運転しても良いのかもしれません。

■欧州車の走り

「デュアリス」販売マーケットは欧州であり、欧州市場に照準を合わせたコンセプト、デザイン、走り、造りとなっています。ヨーロッパのアウトバーンや石畳、山岳地帯などに対応した足回りがこの「デュアリス」にはあります。ドライブしていて本当に気持ちの良い走りをします。インテリア、エクステリアに好き嫌いがあっても、このクルマをドライブしている瞬間は、ドライビング以外気にならなくなると言って良いほどでしょう。

2WDの車体価格が200万前後の「デュアリス」、コストパフォーマンスは素晴らしいのではないでしょうか。

■オンとオフ(ロード&タイム)

5月に「デュアリス」が発売され、8月には「新型エクストレイル」が発売になります。同じミドルサイズのSUVが僅か数ヶ月の間に続けて発売となりますが、そのクルマの性格はかなり違うようです。どちらもオンとオフのどちらにも対応するSUVなのですが、「デュアリス」のフィールドはオンがメイン、「新型エクストレイル」のフィールドはオフがメインのようです。オンとオフ、クルマが得意とするフィールドもそうですが、それを駆る人それぞれの時間のオンとオフ。個人のシチュエーションに合わせた選択となるようです。また、SUVの上位モデルとして「ムラーノ」があり、日産のSUVラインナップはますます充実してきました。

フォトギャラリー
(今回の試乗で撮影した写真のギャラリーです)

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