J31 ティアナ試乗記
(2004年2月20日記)

「車にモダンリビングの考え方」・・・最近テレビでよく耳にするフレーズです。そう、日産ティアナのキャッチコピーですが、モダン建築やデザイナーズファニチャーを取り入れたこのCMって本当によくできていると思いました。一度このCMを見ればティアナのコンセプトを理解することは容易ですし、「高級で、デザインされたインテリア」というクルマのイメージを確立したと言っても過言ではないと思います。しかも第24回2003-2004日本カー・オブ・ザ・イヤーでは、「Best Value」賞に選ばれました。これは、ティアナが新しい感覚や価値を盛り込んだにもかかわらず、クラスとしては安価な設定とした「お買い得なクルマ」と評価を得たものでした。
■日本カー・オブ・ザ・イヤーって?
「日本カー・オブ・ザ・イヤー」という言葉もよく耳にしますが、詳しい内容ってご存じでしたか?エントリーは期間内に発表、発売又は予定されている全ての車種が対象で、第24回では53台の候補車がありました。対象は乗用車だけですが、もちろん輸入車も含まれます。その中から「10ベストカー」として10台が選ばれ、最終選考で1台の「日本カー・オブ・ザ・イヤー」が決まります。
「日本カー・オブ・ザ・イヤー」とは別に、これまた期間内に発表されたクルマの中から「日本カー・オブ・ザ・イヤー特別賞」が贈られる場合があります。この特別賞には「Most Advanced Technology」「 Most Fun」「Best Value」の3賞があり、一定の評価に満たない場合は該当車無しとなります。日本カー・オブ・ザ・イヤーで賞を受けるのは、多くても4台だけなのです。
そしてティアナは「Best Value」賞に輝いたのですが、日本カー・オブ・ザ・イヤーの1次選考である「10ベストカー」にも選ばれていました。
■このクルマが発売されて最初に思っていたこと!
初めてティアナの存在を知ったとき、このクルマのコンセプトを思いついた人はきっと都会の人で、渋滞中でも快適に過ごせる空間を目指したのかな?と考えていました。しばらくしてCMなどでそのコンセプトを知ることとなったのですが、どちらにしても「まったりとした空間」を想定している事には変わりないのかな?などとも思います。日産自動車のHone Pageでは、「お客様を迎え入れるおもてなしの心」を大切にしたと開発者の方が語られていますので、ドライバー以外の人たちをも重視した開発が進められたようです。
■決して「豪華」ではない内装!
ティアナは日産のラインナップのなかでも、セドリック、グロリアに次ぐ高級セダンの部類に入ります。もともと高級車の内装って豪華なイメージがありますので、ティアナがあえて「モダンリビング」をうたっているには、単に内装の質感やデザインを考えてできあがったものでなく、「モダンリビングという空間にあるべき質感やデザインは何か」を細部までこだわった結果、生まれたものであると実感しました。木目調のパネルの面積や、組み合わされた鈍く光るヘアーライン仕上げの金属質。古いオーディオをイメージさせる鈍くオレンジ色に光るセンターコンソールの照明類。ダッシュボードを中心として決して豪華ではないシンプルで美しい、ティアナならではの仕上がりになっています。ただ、デザイナーズファニチャーや輸入家具などは使い込むほどにその良さがでてくるもので、有名なものほど歴史があり、そのイメージだけを個々のディテールとして採用してしまうと、ものによっては「古さ」を感じさせる結果となってしまいます。
実は、今回ティアナの試乗で最初に感じたのが、前記しました鈍くオレンジ色に光るセンターコンソールの照明とスピードメーターなどの照明類の彩度差に少し違和感があることでした。ティアナの場合、メーター類の照明は常に点灯されていますので、メーター類からふとセンターコンソールに目を移すと薄暗いボタン類の照明が「古さ」を感じさせてしまう結果となっているようです。この事は運転者以外にはさほど気にならない事かも知れません。
■モダンな内装は過去にもありました。
日産には、この手のインテリアにこだわった車種が過去にもありました。1992年~1996年まで発売されていたレパード・J.FERIEなのですが、バブル経済絶頂期の代物で、V8エンジンを搭載したものまで存在していました。どちらかというと高級志向も強かったのですが、そのこだわりは当時でも一目をおくものだったと記憶しています。しかしその独特な外観のため、日本ではあまり受け入れられなかった様です。どちらかというと外国人向けのデザインで、北米ではインフィニティJ30として販売されていました。
■3つのエンジン、2つのシート!
日産車の足回りは、どちらかと言えば「硬い」イメージが強かったのですが、ティアナはすごくマイルドな乗り心地でした。今回試乗させて頂いたのは230JK、V型6気筒-2.3リッターの2WDのもので、もし上級グレードのV6-3.5リッターが同じ足周りであれば、高速の追い越し時などではチョット不安を感じるかも知れません。3.5リッターに乗っていませんので何とも言えませんが、2.3リッターで丁度良い足周りのような気がしますし、パワーとのバランスが丁度良いように思えます。3つ目の2.5リッターエンジンは直列4気筒で、4WDのみの設定です。
そして今回一番意外だったのが、グレードによって2種類のシートが存在することです。同じシートで電動、手動のセレクトは納得できますが、デザイナーズファニチャーをイメージしているのであるならば、質感や機能まで変更するのは如何なものかと、チョット残念に思いました。また、空間作りにこだわるティアナなのですが、木目調のパネルが本物の木目ではないことや、ドアの内張の質感がダッシュボード周りに比べ劣るあたり、もう少し素材にこだわってもよかったのではないかと思います。ただ、価格とのバランスがありますので、この辺りは十分に検討された結果なんでしょうね。
■滅多にお勧めしないのですが・・・。
今回の試乗車は、ステアリングがオプション設定の木目調本革ステアリングに交換されていました。この木目調本革ステアリングは、シーマやセドリックに標準設定されているステアリングですが、ティアナ全車に採用されているものよりもデザイン的にマッチすると思いますので、購入の際は是非にお勧めしたいオプションです。木目調と言えば、オプションの中に木目調パネルと言うものがあります。パワーウィンドウのスイッチ周りを木目調に変更するものですが、私自身滅多に勧めないものの一つです。しかし、このティアナに限っては標準設定でも良かったんじゃないの?って思うくらいです。
■分かり難く価格差の大きいグレードの違い!
先にも書きましたが、ティアナには3.5Lの350、2.5Lの250,2.3Lの230と3つのエンジン、こだわり装備のJM、標準装備のJKと2つの内装があり、その組み合わせで6種類のグレード、そして中間グレードとして230JK-Mコレクションがあります。一番低額な230JKが車両本体価格225万円に対し、一番高額な350JMは車両本体価格319万円と、100万円近い差があります。もちろん排気量の違いで価格差が大きいのですが、電動シートやアルミホイールなども大きく価格に影響しています。また、カタログのグレードによる装備一覧表をみると、まるでチェッカーフラッグのような構成で、じっくり見ないとその違いが分かりにくいのも気になります。
■2日間の試乗を終えて・・・
目の前にするティアナは、かなり大きく感じました。実際、セドリックとスカイラインセダンの中間サイズに位置し、後部座席も余裕の広さです。車格はセドリックとスカイラインセダンの中間なのですが、価格はスカイラインセダンよりもお値打ちな設定となっているため、この辺りも含めて「日本カー・オブ・ザ・イヤー特別賞・Best Value」に選ばれた事と思います。
個人的にお勧めするグレードは、バランスが良いと感じた2.3リッターの230。装備では価格差を考えてJK。しかし、シートにはこだわりたいと考えると、230JKのM-コレクションになります。いやいや、わざわざ中間グレードを設定したメーカーの考えに、まんまとはまってしまったのかも?
■外観にも見せ場がありました!
日産のデザインへのこだわりは、既に多くの人に認知されて来ていると思います。今回のティアナではインテリアからクルマを考えたと言うことですが、エクステリアに手を抜いているわけでは無いようです。少し話が反れますが、毎回試乗記を書かせて頂く際、そのクルマをお借りしてまず最初に手洗いで洗車します。そうすると、そのクルマのサイズや大まかな形状、プレスラインやドアノブ、グリルなどの部品に特徴を発見できる場合があるからです。もちろんそんなに真剣に観察しているわけではないのですが、偶然「おや?」と思うことがありそうで、欠かさずにやるようにしています。また、試乗と同時にクルマの写真も一緒に撮っているのですが、そんな中ティアナのルーフのラインが凄く綺麗なことに気づきました。フロントガラスから弧を描くようにリアに流れるラインは、ティアナも内装のデザインだけでなく外観にもこだわっているなと感じた瞬間でした。リアに配置された小さな窓もそのデザインへのこだわりなのでしょうか。当然視認性の問題もあるのでしょうが、デザインに大きく貢献しているのは間違いないようです。