U31 プレサージュ試乗記
(2004年3月20日記)

プレサージュの名前の由来は「予感」を意味するフランス語から来ています。フランス語が理解できない私でも、この試乗で何かを予感させる出来事があるのか楽しみです。もしかしてこの楽しみ自体が何かを「予感」させているのかも?
試乗記も購入記を含め今回で5回目となりました。今までは私の単独試乗がほとんどでしたが、今回は車がプレサージュと言う事もあり、大勢で、しかも長距離走行での試乗をさせて頂きました。もちろん家族全員で試乗をかねて家族旅行・・・とはいきませんので、私を含めて30才~40才前後の男5人と、普段なら好んで体験したくないシチュエーションでの試乗です。幸い他の4人もクルマ好きですので、何かとコメントが聞けるであろうという期待を込めて出発しました。まずは所見から。
■2代目プレサージュ!
ミニバンと呼ばれるこの市場も、コンパクトカーと共に激戦区となっているようです。そのため各自動車メーカーから登場するミニバンには、様々なアイデアや技術が注ぎ込まれているように思えます。そんな中、プレサージュは昨年の6月にメジャーチェンジし、2代目へと進化を遂げました。1998年に登場した初代プレサージュでは、スポーツとラグジュアリーを両立させることをコンセプトに掲げ、このコンセプトは今回のメジャーチェンジでさらに明確化されています。また、走りや居住性だけでなく、2代目プレサージュでは実用性がもっとも重視され、両面スライドドアの採用やオートスライドドア、サードシートワンタッチ床下格納、リモコンウォークイン、サイドブラインドモニター等の新機能、そしてインテリジェントキー、日産車には割と昔から採用されていたバックドアガラスハッチなど、使い勝手に関する機能、新機能満載となっています。
実際に使ってみると、ここまで必要なの?と思うくらいのシステムですが、もちろん便利であることには間違いありません。ただ、サードシートワンタッチ床下格納は簡単にシートが倒れて床下に格納されるシステムですが、シートを元の位置に戻すのにはそれなりの力が必要です。またリモコンウォークインはセカンドシートが自動で前に倒れ、3列目への乗降を容易にするシステムですが、こちらも従来のように手でシートを元通りに戻します。ここまで必要なの?と言っておきながらそんなことを指摘するのか?と言われそうですが、この手動部分も近いうちに自動化、もしくは容易に操作できるようになるのでしょう。この辺りの操作性は、今後ますます取り入れられてくるであろうユニバーサルデザインと共に、ますます進化し続けることと思います。
■エクステリア!
プレサージュのヘッドライトからバンパーにかけてはまるで乗用車のようなデザインで、大型のエアロバンパーからは一種の迫力さえ感じます。もちろん一目見て日産車と分かる共通のイメージを、このプレサージュでも感じました。個人的に思っていたのですが、ミニバンって”まぬけな顔”のフロントマスクが多いと思っていました。キリッとしたフロントマスクのミニバンが少ない中、プレサージュの顔にはスポーティーささえ感じます。また、サイドビューからリアビューにかけたラインと、大きな曲線で構成されたコンビネーションランプのデザインからフランス車のようなイメージをも受けます。
■いよいよ試乗!
今回試乗させて頂いたのは2.5リッター直列4気筒の2.5Xで、Xは装備が充実したグレードのものを指します。スポーツ性を取り入れたデザインであるため車高も低く、ドアを開けて運転席に座ると言う何気ない動作がとても自然に行えます。ミニバンの多くは少し高めのフロアであるため、シートに座ると言うよりシートに上がるようなイメージさえ感じるものがありますが、この何気なく座れる動作こそ、そのクルマの持つ使い勝手につながることとなり、強いては実用性につながっていくのです。
運転席に座った瞬間、誰もがダッシュボードの奥行きに驚かされます。フロントが長い乗用車だってこんなに奥行きのあるものはありません。考えてみると、乗用車で言うボンネットの半分くらいまでフロントガラスが覆っている形になっているのでしょう。つい運転席に座ったままダッシュボードの蓋を開け、手を伸ばしてエンジンのプラグ交換をする姿を想像してしまいました。ダッシュボードの奥行きにより、運転席に座った感覚は、クルマ自体がとても大きく感じられました。またピラーも同じようにクルマの前方まで伸びていますので、クルマの方向性と言いますか、直進性と言いますか、新幹線の先頭車両に乗っているかのような、「まっすぐ前に走るんだ!」という意気込みのようなものを感じました。
■日産車には珍しいセンターメーターの採用!
プレサージュには、日産車に珍しくセンターメーターが採用されています。センターメーターは運転手の視線移動が少なく視認性がよいとされていますが、慣れていない私には違和感がありました。メーター類が単なる情報表示だけでなく車種毎のイメージ作りにも重要なファクターとなっていますので、スポーツカーにはドライバー中心の走りを感じさせるデザイン、ミニバンには情報を共有し室内空間にマッチするデザインが採用されています。日産には他にエクストレイルもセンターメーターですが、エクストレイルはセンターメーターを採用したことによって、ステアリングが跳ね上がり運転席の空間が広がるポップアップステアリングと言う新機能があります。
プレサージュも従来メーター類があった場所に、運転者の小物を収納する便利なコンソールボックスが設けられました。センターメーター採用での利点をうまく使ったアイデアだと思います。ただ、センターメーター採用の車種全てに言えることなのですが、ステアリングの正面にメーター類が存在する従来のレイアウトの場合、右にウインカーを出した場合、メーター表示でも運転者の正面から右側に表示が確認できます。しかし、センターメーターの場合左右どちらにウインカーを出しても、表示は運転者の正面から向かって左側にしか出ないため、慣れない間は気になって確認してしまうことがあります。この事で運転者の意識が運転意外のことに向かないよう、ウインカーの表示だけでも運転者から向かって左右に配置した方が良いと思いました。
■大人5人乗車で高速走行!
大人5人が乗車し、一般道を高速の入り口へと向かいます。まだこのクルマに慣れていないこともあり、アクセルの加減やブレーキの加減を伺いながら走行していると、どことなくスカイラインセダンの走行性に似たものを感じました。また車線変更や交差点でのコーナリング時でも非常に安定した挙動で、この車の重心の低さが伺えます。もちろんセダンに近いミニバンであったとしても、セダンとは根本的に違いますので比較することは出来ませんが、そんな中でもスポーツ系セダンの乗り心地に近いな!と感じました。
高速走行に入り5人が交代で運転しましたが、5人の共通した意見が2.5リッターでも十分のパワーであると言う事と、運転席の視界から受けるクルマのスピード感があまり感じられないと言う事でした。これは十分なパワーでスピードにのっているにも係わらず安定した足周りと静かな居住空間、目に映る視野などが相まった結果だと思います。上級クラスに3.5リッターエンジンも存在するのですが、このスピード感のないクルマには、有り余るパワーユニットではないでしょうか。もちろん、BIGパワーを持て余す余裕の走りというものにも魅力は感じます。
ミニバンは3列シートのものがほとんどだと思いますが、運転席とサードシートの距離感は意外に遠いものです。サードシートに座る人の声は運転席まで届かず、運転手の声はサードシートの人まで届かないのが常です。そのため、メーカーによってはマイクとスピーカーを駆使した会話システムさえ存在します。しかし、このプレサージュは運転席とサードシートの距離感がとても近く感じました。もちろん会話も普通に出来ますので、運転席に座っているだけでは「後ろは狭いのかな?」と思ってしまいます。
■さすがに広いセカンドシート!
ミニバンでセカンドシートが窮屈なクルマはほぼ存在しないと言って良いほど、メーカー各社アイデアや技術を注ぎ込んでいる空間だと思います。大勢で移動する場合、ある意味一番快適な空間になりうる場所でありサードシートへ続く重要な空間でもあります。プレサージュでは両側スライドドアを採用し、セダンの使い勝手とミニバンの使い勝手の両方を手に入れました。また、セカンドシートの一方が左右にもスライドし、サードシートへのアクセスのみならずセカンドシートの環境を確固たるものにしています。
実際に乗ってみると、さすがに足下は広いですね。そして前席の背もたれ部分が目の前に存在するのですが、その幅が意外に狭く後方からの視界が良いと感じました。さらにそのシートの背面が「面」ではなく曲面となっているため圧迫感もありません。ただ、乗る人の体型も様々ですので、シートの高さを上下させる機構があればもっと良いなと思います。
■意外に余裕のサードシート!
運転席からサードシートまでの距離感があまり無いと先にも書きましたが、この事はクルマのデザインからサードシートの空間が犠牲になっているのだろうと思っていました。しかし、実際に座ってみると意外に余裕の空間が存在しました。もちろん足下だって普通のセダンの後部席に引けをとらないくらいです。ミニバンとしては少し天井部分が低いと感じましたが、これもまた普通のセダンの後部座席には匹敵します。ただ、サードシートは後輪の真上くらいに位置していますので、大きな路面の段差などでは下からの突き上げが感じられましたが、それでもある程度の長距離走行であっても十分な居住性を持っていると感じました。
■荷物が・・・。
プレサージュは、簡単にサードシートを収納することが出来る特殊な構造となっているため、シート自体が前後に移動する構造にはなっていません。従ってサードシートを使う場合、ラゲッジスペースのサイズは一定となってしまいます。このサイズ、フル乗車8人分であれば手荷物程度が精一杯。6人でも一泊旅行程度のサイズです。4人であれば十分なスペースですが、皮肉なことにその場合はサードシートも収納できますので8人が三泊してもまだ余るくらい収納できます。どの座席も足下が広いので、ある程度は何とかなりそうですが、まぁ8人で頻繁に旅行する機会など滅多にないと思いますし、もしそういう機会が多い方であれば迷わずエルグランドをお勧めします。
■TEAM PRESAGE
初代プレサージュが掲げた「スポーツとラグジュアリー」と言うコンセプトは、どちらかというとクルマの持つ性能や品質をうたった「物」中心のものでした。しかし、2代目プレサージュでは、その「物」を熟成させた上で、さらに「物」を使う人と人との関わりを重視し、「物」の役割、「人」の役割、「物と人」、「人と人」の連携、コンセプトを「TEAM PRESAGE」(家族を一つのチームにするミニバン)として登場しました。
今回の試乗でも、「プレサージュがある。じゃぁみんなを誘ってどこかに行こう!」と、自然に人を誘って楽しもうという発想が生まれました。無意識のうちに、みんなを誘うと楽しくなる「予感」があったのでしょう。プレサージュは、みんなで楽しむ「人」中心のミニバンなのです。