J32 ティアナ試乗記
(2008年6月25日記)



初代ティアナ(J31)は2003年に発売され、セドリック&グロリアとスカイラインの中間サイズに位置する上級セダンとして登場しました。この時に初めて「SHIFT_interior」を掲げ「車にモダンリビングの考え方」を取り入れました。内装にデザイナーズファニチャーを思わせるデザインを採用するなど、高級車に新たなコンセプトを打ち出しグローバルカーとして日本以外でも人気車種となっています。

そして2008年6月、2代目となるティアナ(J32)が発売されました。初代の「SHIFT_interior」(インテリアをシフトする)から「SHIFT_hospitality」(おもてなしをシフトする)へコンセプトが変更されましたが、「車にモダンリビングの考え方」は変わることなく、「モノの質」から「人のココロ」への拘りを大切にすると言う、コンセプト自体が「SHIFT」しているようです。

セドリック&グロリアが廃止された現在、車格的にはスカイラインとシルフィの間に位置するティアナですが、今回のモデルチェンジで一昔前のセドリック&グロリアと同等のサイズまでサイズアップしました。更に、スカイラインセダンがスポーツ指向であるため、居住性を重視した高級セダンとして見た場合のティアナの格付けは、間違いなくフーガに次ぐ位置にまで近づいてきたと思います。

先に結論付けるような文章になりましたが、今回新型ティアナを試乗させていただき一番に感じた事でもありました。

新型「ティアナ」は、快適な乗り心地と広く静かな室内空間により、乗る人すべてに「くつろぎ」を提供することを目指し、「モダンなデザイン」、「乗るたびに実感する快適な乗り心地」、「乗る人すべてに配慮した装備」という3つのキーワードをもとに開発されました。

試乗させていただいたのは「250XV」、V6-2500ccの充実装備のグレードでした。2500ccの中では最上位に位置する「XV」ですが、そのほかにも「250XL」「250XE」、4WDの「250XL FOUR」「250XE FOUR」、3500cc搭載の「350XV」と、計6グレードが要されています。

■初代から継承されたコンセプト、モダンリビングのインテリア

運転席のシートに腰を下ろした瞬間、シートの柔らかさを感じました。高級セダンのリアシートに腰を下ろすと、その柔らかさに驚くことがありますが、新型ティアナのフロントシートも適度ながら意外な柔らかさを感じたのでした。もちろんリアシートのような極端な柔らかさではありませんが、フロントシートとしてはかなり柔らかい造りとなっています。また、ドア内側に配置された大型のアームレストがシートの形状と合いまり、まるでソファーのようなデザインになっています。

「モダンリビングの考え方」が初代ティアナから継承されているだけあって、新型ティアナのインテリアにはかなりの拘りがあるようです。

インテリアを構成するパーツには、基本内装色(素材)に、木目、マット調のアルミ、クロームメッキなどいろいろな素材がバランスよく組み合わされ、モダンなデザイナーズファニチャーのイメージを十分に醸し出しています。また、センターコンソールのエッジ部分のアルミ素材などを構成するパーツが、あえて面あわせをしない立体感のある取り付け形状となっていることに新鮮さを感じました。

初代ティアナはダッシュボードがとても大きく感じましたが、新型ティアナのダッシュボードはとてもスマートでドライバーや同乗者に威圧感を与えないモノとなっています。それ以上に、立体的なデザインが柔らかさや温もりを感じさせ、新型ティアナのインテリアで一番個性的な部分であると思います。また、センターコンソールは全面が木目で、緩やかなカーブ形状と共に新型ティアナのインテリアでもう一つの特徴となっています。これら特徴あるデザインが、新型ティアナのモダンリビングを強く印象付けている大きなファクターとなっています。

メーター類はシンプルで大きく、中央に車両情報ディスプレイがあり警告やインフォメーションをドライバーに知らせます。
フーガやティーダなどのメーター周りはアルミのトリムで縁取りされドライバーに「走り」を意識させるモノとなっていますが、新型ティアナのメーター表面にはメーターを形取った透明なアクリルカバーがレイアウトされ、3連メーターのトリム形状を作り出しています。そのアクリル素材に反射する光がアルミ材質のそれとは異なり、煌びやかな明るい光の反射を演出しています。更に、夜間には自光式のメーター光が映り込むように光り、今までにないイルミネーションとなっています。

ティアナと言えば助手席のオットマン機構が初代から採用されています。決して運転するドライバー自体は恩恵を受けないのですが、その機構で同乗者に喜んでもらう事がドライバー(クルマの持ち主)の喜びに繋がるようにも思え、後部座席も広く、同乗者全員に「くつろぎ」を提供しています。でも時には、クルマの持ち主だって助手席でのんびりとオットマン機構を味わいたいものですね。

車内は静かで、走行中エンジン音が気になることはありませんでした。風切り音、タイヤのロードノイズも少なく、これはペイントシールやボディ発泡材などで穴や隙間を徹底的に塞ぎ、吸遮音材を最適位置に配置することで外部から入ってくる騒音を効果的に遮断し、高い静粛性を実現しているそうです。また、風切り音を最小化する形状のドアミラーの採用や、VQエンジンには6点式エンジンマウントを採用し、エンジントルクを分散、走り出し時や加速時のエンジン音を低減しているようです。

乗る人すべてに「くつろぎ」を提供することを目指しているだけあって、乗る人の視覚(モダンなデザイン)、聴覚(静かさや各種動作音)、触感(シートの柔らかさ)などに拘が感じられ、運転していてもセレブな感覚を味わうことができると共に、老若男女問わず多くの人に好まれるデザインになっています。

初代からインテリアに拘ったティアナ、2代目では更に洗練されたものに進化しました。

【新技術】

新型ティアナには、シートベルト素材の新しい織り方で、引き出しやすく、着用しても圧迫感が少ない「低フリクションシートベルト」が採用されています。また、片手で簡単に着用できるように、ベルトの金具を差し込む留め金を上向きに固定するタイプも導入され、さらに後部座席は3点式シートベルトとする他、差込口の位置が分かり易く装着しやすい「後席シートベルト自立バックル」が採用されました。

■初代ティアナから受け継がれ、しかも大きく進化したエクステリアデザイン

新型ティアナは、新開発の「D-プラットフォーム」を国内で初めて採用しています。先代に比べ全長は+50mmの4850mm、全幅も+30mmの1795mmとなっています。先にも書きましたが、昔のセドリック&グロリアに迫るサイズで、全幅においてはセドリック&グロリアより75mmもサイズアップしています。しかも、室内空間を出来るだけ広く取るデザインでトランクは極端に短いため、弧を描いた大きなルーフが特徴となっています。ティアナは初代から流れるようなルーフラインが特徴でしたので、初代ティアナから受け継がれたデザインなのでしょう。

フロントグリルは大型で、大型のヘッドライトと相まって同クラスの他車に比べて存在感があります。駐車場などに列べるとそのボリューム感は明確でした。また、切れ込むようなヘッドライト形状や、バンパーのメッキパーツが個性をアピールしていると共に、クロームメッキのモールもまた初代ティアナからのデザインを受け継いでいるといえます。

後部座席のヘッドクリアランス確保のためでしょうか、ルーフが高くトランクが短いため、トランクはかなり高い位置に存在します。そのせいでリアビューもボリューム満点なのですが、全体のデザインはフロントに比べシンプルに仕上がっています。

日産車には珍しく、ティアナは初代からフロントグリルとボンネットが一体になっています。フロントグリルの多くはバンパー側に配置される事が多いのですが、ボンネットとグリルを一体化することで、ボディパーツは少なく、シームレスで滑らかな形状が存在します。とても特徴的で好感が持てる部分でもあります。

私の個人的な意見ですが、初代ティアナから新型ティアナで一番進化したのはエクステリアデザインだと思っています。

■お勧めはレギュラーガソリンの2500ccエンジン

新型ティアナのエンジンは、V6-3500cc の「VQ35DE」、V6-2500ccの「VQ25DE」、4WD専用で直4-2500cc の「QR25DE」と3種類のパワーユニットが用意されました。初代のティアナには2300ccエンジンもラインナップされていましたが、2300ccエンジンよりも2500ccエンジンの方が7%も燃費が向上したということで、2300ccエンジンは採用されなかったようです。

試乗車はV6の2500ccエンジンのものでした。一般道、高速共に申し分ない走りで、決してパワー不足を感を感じることはありませんでした。もちろん機敏な走り・・・という訳にはいきませんが、クルマの性格上その必要もなく、2500ccエンジンで十分と思います。聞いたところによると3500ccエンジンは流石にパワフルで、機敏な加速をすると聞きました。

3500ccエンジンも魅力的ですが、クルマの性格から考えると新型ティアナのお勧めは、やはり2500ccエンジンのラインナップですね。しかも、2500ccエンジンはレギュラーガソリンであると言うこともこのご時世、嬉しい限りです。今回の試乗では、全体の約3割が高速道路、残る約7割は一般道路を利用しました。さらに一般道路ではその半分は山道の走行で、時折CVTのスポーツモードなどを使用していたのですが、車載の平均燃費計によると「リッター8.7」という数字が表示されていました。試乗という事で色々なシチュエーションを試みての結果ですので、通常走行ではもう少し変わってくると思いますが、大型のセダンとしては悪くない数字だと思います。

■優れた環境性能!全車に新型エストロニックCVT搭載

新型ティアナは、全モデルにアダプティブシフトコントロール付きの新型エクストロニックCVTが採用されました。また、V6-3500ccには6段マニュアルモード付きのものとなっています。大排気量エンジンとCVTの組合せ、変速ショックがなく自然にスピードが乗っていくのは当然なのですが、そのフィーリングがとても良く、CVTでありがちなクラッチが滑っているような感覚はほとんどありません。しかも、アクセルを放したときに軽くエンジンブレーキが掛かったような感覚があり、アクセルワークだけで微妙なスピードコントロールが行えるのはとても楽でした。この事は、フラットな道路に限らず長い下り坂などでも有効で、とても扱いやすいものとなっています。

【新技術】

全車にエクストロニックCVTを搭載した新型ティアナには、『エクストロニックCVT』のエンブレムが貼付されています。このエクストロニックCVTは、優れた動力伝達効率により低燃費を実現、優れた環境性能をもつパワートレインを搭載車していることの証となります。

■足まわりのセッティングとシートの衝撃吸収性が調和

一般道、高速共にマイルドな乗り心地でした。ゴツゴツした衝撃も旨く吸収しているようで、「乗るたびに実感する快適な乗り心地」を実現しているようです。ただ、ハンドリングはキビキビしており、ロールも少ないことから、足まわり自体はシッカリとしたもののようで、柔らかなシートがゴツゴツ感を軽減していると思われます。マイルドな乗り心地は、足まわりのセッティングとシートの衝撃吸収性がバランスよく組み合わさった結果なのでしょう。また、スピード感が少なく思えるのも、足まわりが良い証拠だと思います。

■「SHIFT_hospitality」 ティアナはおもてなしをシフトする。

冒頭でも書きましたが、車格としてはスカイラインとシルフィの中間に位置する新型ティアナですが、スカイラインセダンがスポーツ指向であるため、居住性重視のセダンであると言うことで言えばフーガに次ぐ存在であると言えます。言い換えれば、スポーツと言うことを意識しない分、新型ティアナでは居住性やデザインに集中できたのでしょう。室内はとても静かですし、運転していて視界に入るデザインは特徴的で他にはない特別感を得る事ができます。良いデザインは人の気分も明るくし、乗っていて楽しく感じさせます。

日産のクルマは一台一台のコンセプトがハッキリしていて、それを明確に形にしていると常に感じていますが、この車もまさにそう言える一台でしょう。初代からティアナが持っているコンセプトは2代目になっても全くぶれていません。しかも「おもてなし」は、「モノの質」から「人のココロ」へと正常進化を遂げたのです。

実際、クルマは走りを楽しむ・・・事を重視するモノが多い中、ティアナは「このクルマでは、走りなんか楽しまなくてもいいよ。夫婦で音楽を楽しんだり、夫婦で会話を楽しもうよ!」なんて声が聞こえてきそうな、アダルトな仕上がりを感じさせられました。さらに、「楽しいから長距離も平気!」と、やっぱり走りも楽しんでしまう贅沢さも・・・。

また、初代ティアナは2004年の「最もお買い得な車」に与えられる、日本カーオブザイヤー「ベストバリュー賞」を受賞しましたが、今回の新型ティアナも「ベストバリュー賞」に十分値するものだと確信しています。